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MMOガチャと法律についてメモ書きしてみる

オンラインゲームのガチャと法律についてちょっとメモ書きしてやるんだからね!

Q:オンラインゲームのガチャは当選確率を示す必要はないか?
 ANS:法律上、当選確率を明記する義務は定められていない

オンラインゲームのガチャですが、所謂「クジ」です。クジというと「宝くじ」がパッと思い浮かぶと思うけど、これについては当せん金付証票法にこういう規定がある。

当せん金付証票法(昭和23年7月12日法律第144号)
(当せん金付証票に関する告示)
第7条 都道府県知事又は特定市の市長は、当せん金付証票の発売につき、第4条第1項の規定により許可を受けたときは、その発売前に、次に掲げる事項を告示しなければならない。
    一 名称
  二 受託銀行等の名称及び所在地
  三 発売の数及び総額
  四 証票金額
  五 発売期間
  六 当せん金品の金額又は種類及び当せんの数
    七 受託銀行等から直接に購入した者若しくは当該購入者から贈与を受けた者又はこれらの者の相続人その他の一般承継人以外の者は当せん金品を受領できないこと
  八 証票を転売できないこと
  九 その他必要な事項
 2 前項の告示は、当せん金付証票の発売後は、これを変更することができない。

上記が示すとおり、宝くじの場合は当選本数(当選確率)を示すことが義務付けられてるわけね。
んじゃ、これがそのままガチャにも反映できるかというと、実はこの当せん金付証票法にガチャは該当しない。何故なら、ガチャは飽く迄、アイテムであって金付証票じゃないからね。そんなわけで、ガチャのようなクジに関しては別の法律が定められてる。それが不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)なんだけど、そこには全く当選確率の表示義務について書かれてないのよね。
これに関しては実際の判例があって、以前は訴訟記録が下のURLで公開されてたんだけど記事削除されてしまった。
http://ameblo.jp/cave2/entry-10038344990.html
んなわけで、ちょっとその判例のログを転載しますね。女神転生IMAGINEで10万ほどガチャ回して当たらなかった人が運営に起こした訴訟の判例です。

主 文
1 原告の請求を棄却する
2 訴訟費用は、原告の負担とする。


請 求
原告の被告に対する、被告運営のオンラインゲーム「女神転生IMAGINE」のクジ機能がついたカードゲーム」(以下「フォーチュンカード」という。)のなかで、「セブンス引換券」の当選確率が表示されていなかったことにより、原告が平成19年4月下旬ころから同年5月3日ころまでの間にくじにつぎ込んだ費用分の損害として10万円(1回100円の1000回分)の支払請求


理由の趣旨
1 原告は、被告運営のオンラインゲーム内のクジ機能を備えたカードゲームで「セブンス引換券」という賞品を当てることを目的として、1回100円のくじを1000回引いたが、1度も当たらなかったこと、また、その賞品の当選確率がほかの賞品の当選確率にくらべて極めて低いにもかかわらず、表示しなかった被告の運営に問題があったため、原告が10万円をフォーチュンカードにつぎ込むことになったことを主張する。
2 それに対し、被告は、請求原因のうち、原告がフォーチュンカードに10万円を使用したことに争いはないが、被告は、フォーチュンカードはオンラインゲームのシステムとして公正に運営されていて、欺罔のようなものはなかったこと、フォーチュンカードと同様のシステムを用いたサービスにおいても、特賞や確率などの表記はなされていないことが一般的であること、原告は、自己の判断によりフォーチュンカードに参加していること及び「セブンス引換券」はサービス開始日である平成19年4月27日から5月31日の間に当選が177本でており、原告がフォーチュンカードによって獲得した賞品は、本件オンラインゲーム内通貨を用いて現金で購入した場合、合計が19万5900円に相当することを主張している。
3 そこで、被告が、フォーチュンカードの対象賞品に特賞、及び確率を表記すべき義務があったのかどうか及び表記がなかったことにより、原告に損害があったかどうかについて検討する。
4 本件オンラインゲームの対象賞品に特賞や確率の表示をしていないことは、サイト運営として一般的であるとまで言えないまでも、特異な運営であるということはできず、そのことが欺罔にあたること及び虚偽の表示であることを認めるには足りる証拠はない。また、原告は、自己の判断に基づいて、本件オンラインゲームに参加し、自由な判断で行われたものと解するのが相当である。
5 原告の損害については、フォーチュンカードのシステムでは、何も当たらないといったことはなく、対象賞品(甲ー1)及びオンラインゲームにおいて提供するアイテム(乙4-2)のどれかが当選することになっており、原告がフォーチューンカードシステムによって、実際に獲得した賞品を本サイトの課金システムで計算すると、19万5900円の価値があることが認められる。原告が獲得した賞品を現実に現金に換金することは不可能であるが、オンラインゲーム上のトレードシステムやバザーシステムに参加することによって、物々交換が可能であることから、原告に損害が発生したということはできない。
以上によれば、原告の請求に理由がないことは明らかであるからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

わかりやすい判例ですよね?理由の趣旨の4をよく読んでください。裁判官は当選確率の明記を義務とはしていません。また、理由の趣旨1の原告の主張も、4で原告の自己判断として棄却されています。そんなわけで、ガチャの場合は、法的には当選確率を明記する必要はないわけですね。
ガチャの当選確率が低すぎるとMMOは当然人離れが起こってしまうわけですが、それでも時折、人気の高い賞品などでは当選確率が下げられることもしばしばあります。課金ガチャは悪質なものも多く、法的にも規制が検討されているという噂もありました(参考:アイテム課金に法規制? イメージエポック社長の御影良衛氏によるTweetが波紋)しかしながら現状では自己責任になってしまうので、課金はほどほどに。ちなみに全てのMMOでガチャの当選確率が明示されていないかというとそうではありません。以前ハイファイブエンターテインメントという運営で行われていた「ブライトキングダム」(現在サービス終了)は当選確率が明示されていました。
ちなみにこの判例について、MMOの諸問題を扱っている仮想橋さんが記事にされておられます。こちらも読むと良いかもしれません
「女神転生IMAGINE」の現金くじに係る少額訴訟 詳細が発表される

Q:アオノリコのスタミナが自動回復される件が載せられていなかった!これは法的にどうなの?
 ANS:法律上問題はないが……

以前、σ(・m・ )は記事にしましたが、召喚獣と銘打たれたアオノリコが、発売後にスタミナ回復しないという事が発覚しました。運営によって、スタミナ回復しない事が隠されていたわけですね。これは法律上問題ないことなのか?これについて不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)にこう示されています。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年五月十五日法律第百三十四号)
(不当な表示の禁止)
第4条  事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない
  一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
  二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
  三  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの
 2  公正取引委員会は、前項第一号に該当する表示か否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条第一項及び第二項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

はい、よく読みましたか?この条文では、消費者に誤解を招く表示をすることが違法なのであって、景品の不利益なことを「書かない」のは違法ではないのです。要するに、運営がスタミナ自動回復しないのを明示しなかったのはこの法律を利用したためです。何ともヒドイ話ですね?上記のガチャ当選率の話もそうでしたが、MMOというのは極めて法律でも運営側が有利になっているような気がします。そんなわけでσ(・m・ )は例のアオノリコ記事を書いた際に、運営に抗議文を送ってます。その時点に於いて「召喚獣」という言葉は「スタミナが自動回復されるもの」として周知されている(dawasa氏の記事・君主Wiki等の表記を例示してます)わけだから、「召喚獣」という名でスタミナが自動回復しないモノを情報を隠して売りつけるのは景品表示法に違反しますよ、とね。その甲斐あってか、オウム船長ではスタミナ回復しない件が明記されてましたね。ただ、相変わらず、召喚ペットの移動速度は表示してないんだよね…

上記の話をまとめると、消費者に不利益な情報が隠匿されていた場合は返金要求できませんが、ウソが書かれていた場合は返金要求できるということになるわけですが、隠されていた情報があまりにも悪質である場合、返金できないんですかね?コレに関してはσ(・m・ )は判例を知らないんで民事で勝てるか分かりませんが、一応、ネット商法でよく使われる法律でこういう法律があります。消費者契約法という法律です。それによると「消費者に不利益な情報を教えてもらえなかった場合、契約自体を取り消す事ができる」んだそうです(参考:出会い系の関する法律(請求編)=出会い系の紹介サイトのようなので分野が違いますが法律全文も載っていて分かりやすかったので参考に載せてます)。まぁσ(・m・ )は法律家ではありませんので、この法律がMMOでも適応されるか分かりませんけれども、弁護士などに相談してみるとよいかもしれません。

消費者契約法の場合はわかりませんけれども、景品表示法に該当する場合は返金要求することができます。ですが、多くのMMO運営の場合、「他のプレイヤーにアイテムを移動した場合、買ったという証拠がないから返金できない」などなど返金を断られるらしいです。ですが、これを運営に言われた上で弁護士に相談して訴訟してみると、返金ができるってケースも結構知ってます。MMO運営会社は悪質なところが多いです、特に「ネ」がつくところは警察の調査要求すらも長い時間放置したりします(参考:【特別企画】アカウントハックに遭ってしまった!(前編) 被害は救済されない。被害者になって見えてきた問題点と課題)どうしてもという事になったら、運営に聞くよりもまず消費者生活センターや弁護士に相談するのが良いでしょう。

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